「割れ鍋に綴じ蓋」夫妻の話

最初に浮かんだ言葉は「割れ鍋に綴じ蓋」だった。
この前NHKで『ゲゲゲの鬼太郎』で有名な水木しげる夫妻の特集を観ていたときのことだ。
その中で奥さんと水木しげる氏との馴れ初めを聞いて驚いてしまった。
 
当時、水木しげる氏は36歳。
戦争で左腕を無くしており、東京で食えない漫画家生活を必死にやっていたそうだ。
しげる氏のご両親が持ってきた見合い話の相手が、今の奥さんだった。
普通に考えると、左手が無いという大変な障害があること、また生活が安定していないこと、これらは結婚生活には重大なマイナス要因だ。
その時まだ26歳だった奥さんは、この話を断ってもまだこの先よい条件の見合い話があったかもしれない。
 
が、奥さんはしげる氏とお見合いをした。
そして見合いからそれほど経たないうちに、結婚したのだ。
最初に会ったときのしげる氏の印象を奥さんは「重い人」と表現されていた。
悪い意味ではない。
「軽薄な人ではない」ということだ。
たぶん“この人について行ったらきっと大丈夫”な何かを感じさせるものがあったのだろう。
 
そして結婚生活は始まったが、漫画を描いてもほとんどお金にならず、それなのに忙しい毎日だったようだ。
ここで、夫を見限る女性も多いのではないだろうか。
だが、お金にもならない漫画を描くしげる氏の後ろ姿を見て、奥さんはその必死な姿に「感動した」という。
 
「割れ鍋に綴じ蓋」やはりこの言葉がピッタリなご夫妻なのかもしれない。
こういう話を聞くと、『女性にモテるコツ』のようなHow to本の必要性も怪しくなる。
 
来週の月曜から始まる朝ドラ『ゲゲゲの女房』が今から楽しみだ。
そうそう、水木しげる氏はあれだけ妖怪や死後の世界を漫画で描いているくせに、インタビューで
「自分が死んだらどうなると思いますか?」
と聞かれたら、即答で
「“無”になるでしょうな…」
と答えられていた。
御年88才、やはり一筋縄ではいかない人のようだ(笑)。